人形と葛藤

 家から2番目に近いコンビニへ夕食を買いに行くと、DOA(デッドオアアライヴという3D格闘ゲーム)の女性キャラのフィギュア(いわゆる食玩というやつか)が売っていたのでした。
 かわいらしいおねーさんが、ありがちに露出度の高い衣装を身にまとったフィギュアです。しかし私は、DOAのシリーズを全作とおしてゲーセンで200円分ほどしかプレイしたことがなく、それゆえにそのキャラクタに対して愛着は全くありません。
 でも欲しくなったのです。なぜかというと、フル可動だからです。ポージング自由自在なのです(多分)。別にセクシーポーズさせたいわけではありません(いや、買えばさせるでしょうが)。人型でフル可動する玩具というものにわくわくするのです。ジャパンテクノロジーに尊敬の念を抱くのです。
 でもそれは可憐な乙女のカタチをしておるのです。そのような人形が部屋に飾ってあれば、いろんな意味で一発アウトってなもんです(「美少女たまんねぇぜ」な人も「関節の可動たまんねぇぜ」な人も両方アウトな気もするが)。きんもーっ☆ってやつです。ただでさえオタクの世界に中途半端に染まって(棺桶に片足つっこんで)おり、それについて自己嫌悪を繰り返して生きているというのに、これを購入し、飾り、わくわくするのは自己嫌悪の助長に他ならないのです。
 でも欲しくなったのです。あんなポーズやこんなポーズをさせたいのです(いや、たぶんいやらしい意味ではなく)。
 でも私は数週間後に引越しをする身なのです。余計なモノをためる余裕などないのです。金もないのです。今の家への引越しで懲りたはずなのです。
 でも欲しくなったのです。たかだか数百円でわくわくできるのです。私はしあわせ者かもしれません。関節の保持力をこの手で確かめたいのです。多少無理めなポージングで自立するか見たいのです。
 でも…
 結局、買いませんでした。やるかやらないか迷ったら「迷ったらやれ!」というのが正しいとは思うのですが、買うか買わないか迷った場合には「迷うなら買うな!」が正しいのではないか、というのが最近の私の考え方です。これに気づくまでにも結構な歳月がかかっています。