タナカヒロシのすべて

 んー、ダメ人間映画であることは間違いない。ダメ人間というよりはコミュニケーション不全という感じか。ダメ人間である上にものすごい不運。二重苦。現実的にはどんどん事態は最悪になっていくけれど、精神的には前向きに成長していく構造になってるみたい。
 地味ーに地味ーに生きてきた人が不運にも自分の居場所・支持者をガンガン失っていって、精神的な自立をなかば強引に迫られるような映画。けっこうモテるのが救い。私はこういうタイプの人間は好きなんですが、世間的には居場所もないし、放っておかれる宿命にある存在だわな。
 主人公の台詞の拙さは芝居か本当に下手なのかわからない(鳥肌実というひとについて私は何も知らないのでよく分からないのです)けれど、主人公の会話下手な感じをうまく表現してたような。
 自分としては面白かったけれど、うちの親父(故人)は絶対に途中で寝たものと思われる(父のフェイバリットは『寅さん』とか『リーサルウェポン』とか)。万人にはおすすめできないかな。系統としては『バス男』や『ゴーストワールド』と同系統だと思う(偶然にも同じ系統だった)。ものすごく良かったとは思わないけど、見て損はしなかった。