むかし話

 ちっさい頃、私は絵を描くのが好きだった。でも、上手ではなかった。教師の評価は高かったので、級友たちは「suzukisuzukiは絵がうまい」という評価をした。学校の休み時間には友人たちとノートに絵を描いて遊んでいた。
 当時の自分の絵は、「上手な絵」ではなく「おもしろい絵」だったように思う。少なくとも写実的な絵は今も昔も変わらず苦手だ。
 つい昨日、気づいた。あのころの自分は「デザイナー」になりたかったんだろうな、と。「絵でメシが食っていけたらいいな」と漠然と考えてはいたが、幼かったのでデザイナーという表現がボキャブラリの外にあった。画家でもイラストレーターでもなくて、デザイナーになりたかったんだ。
 高校んとき、美術部がなくて、それ以降はそんなこと忘れて過ごした。引越しとタイミングがかぶったため、友人のひとりもいない高校で灰色の3年間。好きな娘がいた。言えなくてストーカーじみてた。学業はそれなりにできた。さほど努力した記憶もない。理解さえすれば楽しかった。だから暗記はできなかった(今もできない)。
 進路について、あきれるほど何も考えてなかった。家を出たい、という程度。センター試験の前日に父親が病死。受験。国公立・行けるランク・そこそこ都市、という阿呆な条件で大学を決める。専攻もコースも名前だけしか見てない。2次試験が小論文だったのも理由のひとつ。
 将来については真剣に考えて、できるかぎり行動したほうがいい。失敗とか挫折にだって意味がある。何もしないのが一番よくない。とりかえし、つかない。そう強く思う。
 自分がまともに働く日が来るなんていまだ思えないあたり腐ってるけれど、もしもまともに働いて恋愛して結婚して子供ができたら、こういうことクドクド説教するんだろうなぁ、というのは想像できる。
 ちっとも眠くないので昔話を書いた。うつ期かもしれない。