良くも悪くも何もない。

注:毒にも薬にもならない寝言ポエムですから、読むなら覚悟を、読まぬならそっとしておいて下さい。
 私は引越しを契機とした、終わりのないガラクタ整理に明け暮れていた。
 さて、晩飯でも買いに行くかと財布と部屋の鍵をポケットに入れながら立ち上がり(コンビニ行くだけなので携帯は携帯しない)、テレビと部屋の照明を消すと、テーブルの上で奇妙なものが光っていた。
 大きさはうずらの卵ほどで、形も良く似ている。色はいわゆる蓄光塗料(蛍光グリーン)のそれである。
 私はLEGOを趣味とする人間であるから、うちにある蓄光アイテムとして真っ先に思いついたのはLEGOのゴーストのミニフィグ(プロフィールに写真を載せているこいつ)や、魔法使いのミニフィグが手に持つ、先に星のついた杖であった。
 しかし、それらとは明らかに形状が異なっていた。そのような形状のものをテーブルにのせた記憶もない。私はなんだか恐ろしくなって、もう一度部屋の明かりをつけた。
 そこにあったのは、いわゆるチャッカマン、ボタン式で着火口の長いライターだった。着火ボタンの部分のみ、蓄光素材でできていたのだ。押入れに眠っていたチャッカマンなら、たしかにテーブルに置いた。
 彼(チャッカマン)は、元彼女の「花火がしたい」という発言がもとで、大量の花火とともに購入され、一度も使われずに眠っていた。当時の彼女は多忙で、数えるほどしか会えなかったためだ。確かハローキティのイラストのシールが貼ってあったが、購入されたその日に私によってはがされた。
 不意に、あのころを思い出しても、それに対して正負どちらの方向にも未練がましく思わなくなっている自分に気づいた。「あ、通過できてる。」この感情が何だか新鮮だった。やっとかよ、遅ぇよ、とも思わなくもないが。
 あのころ好きだった。あのころしあわせだった。それだけでいい。充分だ。
 あのとき買った花火は、そのまま燃えるゴミに出したのを思い出した。ゴミ処理場で美しく燃え上がる花火を想像して、どことなくおかしくて笑った*1

*1:よろしくない捨て方だっただろうか。