無題

いっしょに映画を見て、ぼくが
伏線の張り方や
編集の巧みさや
作品のメッセージ性に
思いを寄せている間、あのひとはずーっと
登場人物の心の動き
ただそれだけを自分に投影していた。そしてときにはげしく泣いていた。
ぼくはいわゆる社会的ひきこもりに近い状態で、今よりずっと抑うつ的で、
何より人の気持ちのわからない、ロボットみたいな生き方をしていた。
何もしないことは、いいことだと思っていた。
しかも悪いことに、自分でそれをのぞんでいた。バカだったなぁ、と思う。

チープな言葉でいうならば、コミュニケーション能力に欠けるということで。
今はあのころよりはマシだけれど、それでも決して立派ではなくて。
それでも、あのころやあのひとを思い出すスイッチが、いたるところにある。
何とかならねぇもんかなぁ、と思う。いろいろと。