昔話

 小学3か4年生のころの話である。
 学級会の時間(今は学級活動の時間とかいうのかな)に、あるテーマで話し合いが行われた。あるテーマとは「学校に持ってきていいもの・悪いもの」とかそういう感じであった。
 どうしてそんな話し合いが必要だったのか、さっぱり覚えていない。誰かがよくないものを持ってきた、ということはなかったように思う。
 担任は話し合いの展開を黙って聞いていたのだが、所詮小学生は阿呆である。当然のように「他人に迷惑かからんかったら何もってきてもいいやん」という流れに。男子はみな当時大人気だったミニ四駆を持ち込み可にするために弁舌を振るい、比較的まじめな女子は「急に動き出したりしたら危ないから」という阿呆な理由でそれを防ごうとした。ぼくは「ゲームボーイが持ってこれるようになればいいなあ」と思いながら黙っていた。
 議論と呼ぶにはあまりにも稚拙な話し合いもだんだんと落としどころが見えてきて、結局「音を出すもの、動くものはアウト。あとは人に迷惑にならない範囲でOK」という感じの結論が出た。なんだかんだでゲームボーイは無理めだということで、ぼくは少しがっかりした。それでも「コロコロとか持ってこれるじゃん、ウヒョー!」みたいなテンションではあった。ぼくだけではない。クラス全体がわくわくに満ちていた。
 そんな中、担任が最後に一言「そんなもん勉強に必要ないからいかん!」と言った。全てが水泡に帰したのである。
 何のためにあの話し合いの場が持たれたのか、いまだに分からない。そしてミンシュシュギの無能さ(馬鹿の議論では馬鹿なりの結論しか出ない、という意味でもあるし、「そんなもんいかん!」で即・終了してしまう脆さのことでもある)を知ったのは、今にして思えばこのときだったのかもしれない。