CD

Every Single Day -Complete BONNIE PINK (1995-2006)-

Every Single Day -Complete BONNIE PINK (1995-2006)-

 この人の曲をろくに聴いたことがなかったのだが、「ぼくはこのCDを買うべきだ」という全くの無根拠な意志がいつの間にかめばえていたので購入。何を言っているのかよく分からないだろうが、自分でもよく分からない(ポルナレフ)。とりあえず現実を見れば、とりあえずぼくはこのCDを買ってしまったのだ。
(日ごろから音楽に慣れ親しんでいる人間はたまにはジャケ買いとか、天啓に従った購買行動をとるのもよかろうと思うが、ぼくはロクに音楽愛のない人間である。無謀な買い方以外の何物でもない。)
 「買ってしまった」なんて表現は失礼だ。非常に良いCDであった。ぼくはほんの数年前まで「ラブソング全廃論者」だったのだが、今となっては考えられないことである。
 何と言うか、「いいとこ切り取ってくるなー」という感じ。
 ラブソングを作るにあたって、恋愛というひとつの壮大なものの中から、断片を切り取ってくる必要があるわけですけど、その切り取ってくる部分が実にいい。上手い。巧みだ。そこにある「恋愛でしか感じ取れない、キューって心が締まるような情感」が気持ちいいアルバムだと思った。
 まぁ、ちっとも音楽通でも恋愛通でもない人間のたわ言だから、参考になりようがない気もするが。
 ぼくは人の心の機微がろくに分からないダメな子(であり、そこから脱却したくてたまらない子)なので、こういう、複雑な感情を巧みに楽曲に落とし込んだ作品に触れられたことを喜ばしく思う。あと、いわゆるふつーの人はこのような優れたものに慣れ親しむことで人間性を培っているのだと思うと、ぼくはあまりにもふつーの人から遠いところにいて、もう2度と恋愛なんて得難いのではないかと思えてきて、つらい。がんばるぞ、とも思えるが。