今日の残念

 あるしょうもないことのために待ち合わせをすることになった。待ち合わせ場所が大手スポーツ用品店のそばだったので立ち寄ることにした。以前から、ダンベルが欲しかったのである。あまりにモヤシっ子なので、体を鍛えてみたいと思っていたためである。
 中に入ってみると、実は限りなく服屋だった。トレーニング道具の売り場は思いのほか狭い。まぁそのへんは気にせず、ダンベルを見に行った。
 売り場の女性に説明を受け、そこそこ安いダンベルを2つ選び、持ってレジへ。
 レジで会計を始めると、何かおかしい。片方ずつで価格が違うのだ。よく見ると、4kgと3kg。重さがばらばらだ。
 店員に謝って、3kgのを2つに変更をお願いし、片方だけの3kgを使って2つ分の会計を済ます。交換しに行ったのは、先ほど説明してくれた店員のおねーさんだ。
 待つこと約5分。
 交換に行った店員が戻ってきた。手ぶらで。「すいませぇん、ちょっと在庫確認して来ます」。ふむ。
 待つこと約5分。待ち合わせ場所へ行くよう催促の電話がかかってきた。
 確認に行った店員が戻ってきた。「すいませぇん、ちょっとこの商品は切らしてるみたいで」。ふむ。「同じ3kgの、2つセットでこれより安いものがありますから、そちらでどうですか?」ふむ。けっこう長いこと見比べて選んだ安いダンベルだったはずだが。さらに安いならそれでもいいかな。
 待つこと約2分。
 取りに行った店員が別のダンベル持って戻ってきた。ぴっ。レジでバーコードを読み取る。あれ?明らかに最初のダンベルより高い。店員もとまどっている。「500円ほど高くなってしまいますが、こちらでいかがですか?」。いやいやいやいや、安くなるんじゃないの? いやですよ。「一週間いただければ取り寄せできますが…」。そのためにまたここに来るのも面倒だし、そもそも待ち合わせ場所にもう行かないといけないんで、もう結構です。
 あ、1つしか存在しないダンベルを2つぶん、会計してしまったあとなんだった。この片方だけのダンベルは返すよ。だから返金プリーズ。「返品はサービスカウンターにてお願いします」。レジじゃダメなのか。面倒くさいね。
 サービスカウンターにて、レシートを渡す。
 待つこと約5分。「返金ですねー、こちらに住所氏名電話番号をお願いします」。
 …。
 はぁ? ぼくはダンベル買おうとしてレジに並んだだけで、待たされたあげく何も買えずに待ち合わせに遅刻しそうになってるだけですよ? 店のヘマ続きで待たされまくった挙句何も得られなかったぼくがなぜか個人情報をこの店に晒さないといけないんですか? 馬鹿なんですか? やっぱこういうとこの人間は脳筋なんですか? ”脳みそまで筋肉”の略ですよ? わかりますか脳筋のひと。あなたのことですよ? わかりますか?
 と思いながら、事情を説明して、それでも名前だけ書かされた。
 「ぼくはモヤシっ子でいるように」という神勅が下ったような気がしている。残念なことだ。